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2021年3月 7日 (日)

マタイ受難曲2021のこと





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マタイ受難曲2021
の開催から2週間。豊洲シビックホールで、配信でご観覧くださった皆さまに改めてお礼を申し上げます。そして度重なる延期を経て、緊急事態宣言下にもかかわらず上演できたことは、関係者全員に深く感謝するばかりです。
 

15歳からミュンヘンで過ごした自分がたくさんの音楽と出会う中で、歌手のコレペティ(練習)に付き合い、晩年のカール・リヒターを目の当たりにしながら、その美しさと深さに殴られるようなバッハのマタイ受難曲の存在は特別なものとしてずっと私の中ずっと残っていました。このあまりにも美しく人の心を打つ作品をいつか、今自分の周りにいるジャズや様々な ジャンルのミュージシャンと共に演奏することによって、クラシックのフィールドで上演されるマタイ受難曲ならば一生聴くことはないかもしれない人たちにも、この作品を届けることがで きるのではないかと思い、何年にも渡り試行錯誤しながら進めてきた、草の根のような試みがこのプロジェクトです。
その意味においては、やっとスタートラインに立てたのかもしれないと感じています。


作曲を生業とする者にとって、今自分たちが新たに生まれる音楽を伝えたい気持ちがあるにかかわらず、過去の偉大な作品をカバーすることにも拘るのはなぜか。

音楽哲学者、テオドール・アドルノの言葉にこの答えがありました。
「われわれが音楽を理解するのではない。音楽がわれわれを理解するのだ。
作曲家よりも長い生命体としてたましいを持ち、呼吸をして、時代の色を変えて、過去から現代をこえて未来へ行き続ける。
その途中でふと出会った私たちを見据えている。その前に立ち止まったのも何かの縁かと。」(林田直樹「よく聴く、よく観る、よく読む」より)

何世紀にもわたり世界中の私たちを見据えてきたマタイ受難曲は、日本でふと立ち止まり、今、初めてあなたに出会った私たちを見据えながら未来へと生き続けるでしょう。
それでも、ここで縁を与えられた私たちにとっては、大切なできごとになるはずだから。


マタイ受難曲2021は2021年3月7日までご視聴いただけます。
https://twitcasting.tv/c:gnmusic/shopcart/49963

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