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2013年3月30日 (土)

無意識を掘り起こす

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父の兄が死んだ。
ずっと容態が悪く、ひと月前には危篤だから会いにきてほしいと連絡があったらしい。
それでもいったんは持ち越して、落ち着いていた矢先のことだった。

叔父は兄弟の中でも父によく似ていた。足が不自由な父は自分が葬儀に参列するとかえって迷惑がかかるということで、ふるさとの山形に帰ることを断念した。父は普通に振る舞っていたし、夕飯の時にはいつものようにビールを飲んで、いつものように冗談を言ったりしていた。でもその実、心の中では何を考えていたのだろう。


そういえばこの間、実家近くの酒屋の看板おばあちゃんがいなくなっていることに気がついた。いったいいつからいなかったのか。心なしかその息子も白髪が増えて、ずいぶん年をとったように見える。建物も、周りの風景も変わらないのに、そこからは風景の中にとけ込んでいた、いるはずの人がいなくなっていた。

祖父母が早く亡くなった割には両親が未だ健在なわたしは、自分に近しい存在を失う経験がないといえばない。そんな言い訳をして、あまり真剣に考えたことがなかった。
命には終わりがくるのだから、いずれは順番が来て、世代が替わる。自分の記憶の中にいる人間が、ひとり、またひとりといなくなることを、年を重ねて生きながらえた人間は経験しなければいけないんだ。早く死にたくはないけれど、それって相当きついな。でも若くして命を落とした人たちの無念さを思えば、こんなわがままを言ったらばちがあたる。長く生きた分だけ、つらいことも経験しなきゃだめなんだろうと思う。

有名人の葬儀で「いずれ俺たちもそっちに行くからな」とか「先に行ったあいつと酒飲んでるか」みたいな言葉を送っているのはこういうことだったのか。
高齢になって動けなくなった犬やネコも、ろうそくが消えていくように自分の死期をじっと待っているように見えることがある。人もそんな風に、まわりの変化を受け入れながら、自分の寿命を知るのかもしれない。

人はなぜ生まれて死んでゆくのか。消耗品のようにわらわらとその循環を繰り返しながら歴史は続いてゆく。わかりそうでわからない、解けそうで解けない問題の答えが目の前に見えない壁を作ってそびえている。


山形へ行く。父の代わりといったって、代わりにはなれないんだけど。


2013年3月23日 (土)

インタラクションツールとしての音楽vs人口知能

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ITの分野におけるインタラクションが流行っている。
人間とシステムの間で情報をやりとりすることから、おもしろいことが生まれるということらしい。

このニュースを聞いたとき、人工知能イライザのことを思い出した。
イライザは映画「マイフェアレディ」でオードリー・ ヘップバーンが演じる言葉に訛りのある女性の名前で、映画の中ではヒギンズ教授にその訛りを直される。この映画公開後に言語学者が作ったのが人工知能イライザで、相手が入力した文章にパターンを見つけてそれにふさわしい反応をするというもの。
イライザにはもちろん感情も思考もないのだけれど、いまどきの人間は相手の話を真剣に聞いてくれないのだろう、イライザが相手の文章に必ず反応をして質問をすることから、対する人間は真剣に答えてしまうのだという。

インタラクションとは「相互作用」あるいは「対話」のこと。
ようするに、人は、人と対話をするよりも、システムや人工知能とのコミュニケーションをとることを好む時代になったのかと思う。



元来なまけものだから、ライブやコンサートをずっとやらない時期があった。聴き手の見えないレコーディングは、どれだけその先を想定しても、その息づかいを感じ取ることはできない。
だから最近ライブを頻繁にやるようになって、改めて音楽が送り手と聴き手との間に存在する確固たるインタラクションの媒体であると感じる。音楽が時間に支配された表現方法であるとするならば、その時間を共有することによって、送り手と聴き手はまちがいなく互いに影響を及ぼし合うのだ。
でもそのインタラクティブな関係は、とてもクールで、決して強要されるものではない。同じ空間にいながらも、ひとりひとりが自分だけの時間に誰かと何かで影響し、される。
そんなことが誰もが知っていることだとしても、わたしはそれにやっと気づいた。




たとえiPhoneでしか音楽を聴かない人に、空気が振動して音が聞こえから大きなスピーカの前に行くと身体に音の波を感じるんだよ、と熱く語ったところで、そうなんだで会話は終わるだろう。
それは音楽に限ったことではないんだきっと。
人とのコミュニケーションも実際に会って話すよりメールやチャットの方が楽だったりする今。
あながちそれが感性の退化とか煽るべきではない。どうであれ、これだけの情報過多社会を作ったのも、それに疲れているのも、みんな人間なのだから。

だったらせめて、コミュ障の人に伝えたい。自宅警備もいいけど、ライブにはどこよりも思いっきり一人で自分の世界に浸れる瞬間がいっぱいあるんだ。


作曲をするということ@辻康介 作曲家・ピアニストと二人ライブその4


辻康介 作曲家・ピアニストと二人ライブ その4

3月24日(日)
辻康介(歌) shezoo(作詞作曲・ピアノ)

千駄ヶ谷・音楽室3F(渋谷区千駄ヶ谷2-10-1木島ANNEX3F)

16時開演(15時30分開場) 19時開演(18時30分開場)

charge:¥2,500 限定20名(要予約)飲み物持ち込み可

予約・問合:DaNemo (ダ・ネーモー)mailto:nemotsuji@mac.com

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今回、このコンサートのために2曲新曲を書いた。
寺山修司と滝口修造の詩に、正しくは書いたというより書き捕った感がある。

歌の曲を書く作業は、同じ音楽にもかかわらずものすごく特別なものだ。
まずは言葉があって、それから音がある。送り手の都合で、それが逆になったとしても、聴き手はまちがいなく言葉を先に受け取る。

自分で書いた詩の場合には、順番がどうであれ、ふたつは相まって発生してくる。
でも詩ありきの場合、まず自分が読み手になる。
詩を何度も読んで読んで読んでいくと、自然と音と曲が詩にくっついてくるので、それを湯葉みたいに掬って書きとる。なかなか掬い方がむずかしくて、別の間違ったものもすくったりするから時間がかかる。

この曲が聴き手にどう響くのか、日曜日が待ち遠しくてこわい。


そもそもいい音楽って何だ。

誰にでも開いている音楽が存在するはずもなく、開いてる人の種類によって音楽のヒエラルキーが存在するのか。
さもなくば多くの人が支持する音楽がいい音楽なのか。
たった一人が好きでたまらない音楽はいい音楽ではないのか。
そんなことがあるはずもなく、手軽にダウンロードして、誰もが自分だけのプレイリストを作れる自由を得られる現代においては、自分だけの1曲こそが大切なのだ。
いや、誰かだけのいい音楽は、時代も場所も飛び越えて、ずっと存在し続けているに違いない。

ならば、作曲者はどこを向いて音を作ればいいのか。
掬い捕った音楽なんか歌ってもらって、聴いてもらっていいのか。

音楽に正解はない。
でも、答えはきっと存在するんだと思う。

2013年3月22日 (金)

何もないところ

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人に与えられた何かを確かめに行くのではなく、自分が行きたいところで時間を過ごす。

何もなくていい。何もないところで、もし自分が何か見つけたとしたならば、それはそれで嬉しかったりする。たとえ見つからなくても、何もなくても、そこで過ごした時間は自分の中に残る。

2013年3月19日 (火)

Moons

words & music by shezoo

西の空にふたつの月が浮かぶ
ひとつは昼の月
もうひとつは夜の月

東の空にふたつの月が浮かぶ
ひとつは風の月
もうひとつは砂の月

潮の満ち引きに導かれ
月は満ち
また欠けてゆく

両極の様に引き合い
そして
互いに背を向ける

東の空にふたつの月が浮かぶ
ひとつは昼の月
もうひとつは夜の月

西の空にふたつの月が浮かぶ
ふたつの月は
それぞれを見つめる



2013年3月11日 (月)

藤井さんのこと

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藤井さんは動物病院の入り口に近いベンチに座っていた
脇にはメッシュでできた軽くて便利そうなキャリーバック

卓球のネットでできているんですって
洗えちゃうし
インターネットでひいてみたらきっと出てきますよ
と教えてくれた


そしてその中にねこがいた


はたちを過ぎてるんですよ
21か、2かもしれない、16までノラだったからわからない

リンパ腫なんです
もう手術はできない、人間なら100歳越えてますから


気がついたらそばにいた
猫なんて飼ったこともないし、どうしていいのかわからなくて

聞いたらお腹がすいているからごはんをあげろっていわれても
えさが何かもわからなかったら
これって渡されたのを見たら固いつぶで
こんな固いものをたべるのかとびっくりしました

それまでは猫の存在を意識したこともなかったし
うちのまわりに猫がいることも
猫たちにごはんをあげたり世話をしたりする人たちがいることも
町内の清掃活動のとき猫が一緒に参加していることにも気づかなかった



それから家の中に引き取りました
定期的におこなっていた血液検査でもいつも問題がなくて
じぶんたちより長生きするものと思っていた

それが突然
リンパ腫がみつかった

どうなっていくんでしょう
少しずつ体重が落ちている
でもね、手は大事ですよ
この間、呼吸困難になったときも
何もできないからずっと手でさすっていたら少しずつおさまった


時々思うんです
1年のうち1日でいいから
犬やねこと話ができる日があったら
でもそれが英語か日本なのか、困りますね
おとぎばなしみたいですけど

どんなこねこだったのか
16年間どんな暮らしをしていたのか

今はあまり副作用の出ない薬をもらってます
楽になるように
いつまでかな
穏やかな時間を過ごせさせてあげられますかね




藤井さんの名前が呼ばれて
二人はキャリーを抱いて診察室に入って行った

両親と同年代の藤井さんは
山崎ナオコーラがいうところの
「年齢をかさねて諦めることが増える、つまりあきらめるの語源、明らかになることが増えた」
人達に見えた

あんな風に年をとれたらいいな
そうすればねこだって
気がついたらそばにいてくれるかもしれない





生き物はきっと
大小の違いはあれど
必ず使命を持って生まれてくるんだ

その使命がどんな時、だれに果たされるのか
本人も気づかないまま


2013年3月 4日 (月)

音楽の顔

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音楽は生きて行くのに必須のものではないし
なくたってすぐに死ぬわけでもない

でもお腹が空くのと同じように
ひとたび聴きたくなったら
いてもたってもいられなくなる

だから自分の聴きたい音楽が
家にいながらすぐに手に入る音楽配信は
受け手にとっては良いものなんだ

そもそも音楽の好みなんて千差万別なんだから
大量生産したものを民衆が買うシステムとは
受け手の選択肢が増えた今となっては
誰もが自分だけの1曲を手にしていいし
そうあるべきなんだと思う


何かと物議をかもすデジタルデータのやりとりは
時間に価値が求められる現代に不可欠なシステムである
ならば
音楽媒体の顔ともいうべきジャケットのヴィジュアルについても
切り離されて行くのか





何を買うでもなく
小学生になったわたしは
学校帰りに近所の商店街にあるレコード店に立ち寄っては
店内をウロウロしジャケットを引っ張り上げて行く

その頃はまだ試聴なんてできなかったし
お金も持っていなかったから
ただひたすらジャケットを見て歩くだけ

あの当時、こんな子供を許してくれていた下高井戸のオスカーは
すごい店だったと思う



大人になってからは
その頃の夢を果たすべく
相当な枚数をジャケ買いに費やした

ジャケ買いはあくまでも
聴きたい曲を購入する目的ではなくて
その絵の中に潜むものがどんな音楽であるのか
想像をして楽しむもの

あたりもあればはずれもある
要するに博打なんだ
そしてそのスリルを楽しんだんだから
たとえジャケットにだまされても文句はいえない




あの頃、いや今もその気持ちは変わらない
なぜあの四角いフィールドに描かれた世界に
心躍らされるのだろう

デザイナーというフィルターを通して描かれた音楽の世界が
いったいどんな音楽であるのかを想像してみる
きっとその時間こそが
この上なく楽しいのだ




これから先
すべての音楽が形を持たなくなったとしても
どうかジャケットがなくなりませんように

Trinite「prayer」のデザインを手掛けてくれた冨貫功一さんの個展を見ながら
今日ずっと考えていたこと





                               @ GALLERY SPEAK FOR
                               冨貫功一「Double A Side」

2013年3月 2日 (土)

CHINO(vo) / shezoo(p) ライブ 3/17(sun)@レディジェーン

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「彼岸入りの夜」ライブ
3月17日(sun)@下北沢レディジェーン open 19:00/start 19:30
CHINO(vocal)/ shezoo(作詞作曲、piano)

~Trinite「トリニテ」の作曲をになうshezooが書き綴っていた歌にCHINOが命を吹き込む~

CHINOの歌を日本人はおそらく一度は聴いたことがあるはず
コーラスとして名だたる歌手を抱きしめるように支えてきたこの歌声が今、自分の声で、言葉で、聴く者にメッセージを伝え始める

charge:予約 ¥2,700/当日 ¥3,000+Drink Fee

【予約・問合せ】
LADY JANE:03-3412-3947
BIGTORY:03-3419-6261
ホームページ:http://bigtory.jp/


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