« 間の極意 | トップページ | 脱出ゲームの解き方 »

2008年11月 4日 (火)

見えるものと見えないもののあいだ

Photo_2
ネットで原美術館をチェックしていたら、米田知子展「終わりは始まり」が開催されているとあった。
彼女はロンドンを拠点に活動している写真家で、近年めざましい活躍をしているという。
不勉強な私は、彼女の名前をこの写真展で初めて知った。
「終わりは始まり」とは、なんと素敵な響きだろう。


http://www.haramuseum.or.jp/generalTop.html



焼け焦げた壁紙

夜明けの山並みに浮かぶ煙に包まれた工場

部屋におかれたソファ



一見するとさりげない風景や、生活のワンシーンを切り取った情景のような写真が並ぶ。
私はこういう写真が好きだ。

ひとつひとつの作品を、丁寧に見て行こう。
パンフレットに目を落とし、タイトルを見た瞬間、頭を殴られたような気がした。

違う、これはただの情景写真などではない。


その理由は、彼女が付けたタイトルにあった。

焼け焦げた壁紙の下には、暖房の風向がある「Heat」
 あの寒い日々、その風は部屋を暖め、人に温もりを与えたのだろう。その積み重ねとして、風は壁紙をも焦がしたのだ。

山並みに編み込みまれた、これこそ関東軍が爆弾を仕掛けた南満州鉄道の「線路」
 満州事変勃発の場となった瀋陽、その地を臨む。

この部屋で最後の瞬間を生きた二人と。
 「アドルフとエヴァのソファ」



 

最も強く彼女の感性に魅きつけられた作品、それが今日の日記の題名にした作品集「見えるものと見えないもののあいだ」

これは眼鏡をかけていた実在の人物たちが、彼らにまつわる書面や楽譜がぼやけている中、眼鏡のレンズの先だけはくっきり見えるというもの。

「マーラーの眼鏡」
 交響曲第10番(未完成)の歌詞が五線紙に書かれている。
 レンズの先には「Leb'Wohl(永遠にさようなら)」文字がくっきりと読み取れる。

「マハトマ・ガンジーの眼鏡」
 『沈黙の日』の最後のノートを見る。

「トロツキーの眼鏡」
 未遂に終わった暗殺計画の際に燃やされた辞書を見る

「谷崎潤一郎の眼鏡」
 松子夫人への手紙を見る。


現代に於いて、歴史的な出来事を画像で伝えるとするならば、できる限り即座に現場の悲惨さを伝える報道写真が思い浮かぶ。

彼女の手法は、それとはまったく異なる。
あまりにも日常的な情景がそのタイトルと結び付いた時、それは一瞬にして人間の犯した行為を鋭く抉り取り、見る者にその事実を激しく伝える。
これは、しっかりとした主張を持った事実の裏付けをアートとした写真なのだ。
米田知子との出会いは、ドキュメントの新たな在り方を知った瞬間だった。


「見えないものを見る」視線といえるものこそ、彼女の特徴であるという。
そして彼女自身は「記憶と時間」をテーマにしているという。



米田知子を検索して行くうち、薄い緑のカーテンの揺れる窓が広がるホールの写真に出会った。
「教室」
 遺体仮安置所をへて、震災資料室として使われていた/芦屋

「震災から10年」をテーマに芦屋市内を撮影した「シーン」のシリーズがあると知った。
この作品は、現在開催されている横浜トリエンナーレの2005年に展示されたという。

トリエンナーレ、今年は絶対に行こうと思っていた。
2005年。
行けていない。

こんなに悔やむことがある。
だから、ライヴも展示も、怠けず、今をチェックしていなければいけないということなんだ。

http://www.shugoarts.com/jp/yoneda.html
http://em.m-out.com/ec/html/category/001/002/172/category172_0.html
http://artshore.exblog.jp/2113492
http://www.yaf.or.jp/yma/exhibition/2007/collection/1/exhibition3.html
http://www.eu-japanfest.org/program/13/japan/in_between09.html
http://www.fujitv.co.jp/events/art-net/go/680.html






ケンウッド トワイライトライヴ
スクエア・丸の内で不定期に月2、3回開催される平日の夕方19:00〜20:00のライブイベントです。

『ソロピアノwithアート。shezooライブ』
日時:     11月7日(金) 19:00〜20:00(開場18:45)
出演:     shezoo(ピアノ)
内容:     映画音楽、CM、舞台などの音楽の制作を手がけ、卓越したピアノ演奏家として活躍するshezoo(シズ)のソロライブです。CDアルバム「ネイチャー・サークル」でコラボレートした霧島留美子の絵画を大画面に映しながらの演奏。深まる秋に相応しい音楽とアートをお楽しみ下さい。
予約:     TEL:03-3213-8775 (ケンウッド スクエア・丸の内まで) 
http://www.kenwood.co.jp/j/square/event/twilight.html

« 間の極意 | トップページ | 脱出ゲームの解き方 »

Anblick」カテゴリの記事

Interesse」カテゴリの記事

Woerter」カテゴリの記事

コメント

深い気付きです。

感謝

マーラーの眼鏡に非常に興味があります。
大のマーラー好きなもので。。。

自分にとっての見えるものは何?
見えていないものは・・・???
そうして、気がついていなくとも、見えていなくては
いけないものは????と、思わせられずにはいられないものでした。。。。

今後、見えているもの、そして、こんな風に、周りから見えているんだろう、、、、でも、本当は???

何が真実???と、思わせられる
作品群、、、どう、感じるのか????という、
自分、、、、

帰りがけに、自分が感じていることと、
自分の日常とのギャップ、、、、

考えさせられました。

shezooさん、ありがとうございました。

たっきぃさん

「終わりは始まり」
無限、それは輪廻への感覚。

「見えるものと見えないもののあいだ」
生きて行く上に置いて大切にしなければいけないものの存在。

確かに。
真実への気付きでした。

ぐいりぃさん

マーラーの眼鏡といえば、彼のポートレートでも印象的な分、興味深いですよね。
 
ぐいりぃさんの眼鏡の先には、何が見えているのでしょうか?


ポンさん

「見えるものと見えないもののあいだ」
このフレーズから、自分にとって見えるものと見えていないもの、そして自分がどう見られているのかということ、全く考えが及んでいませんでした。

見えていないもの、気がついていなくとも見えていなくてはいけないもの。

沢山考えさせられました。


コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1070666/24996059

この記事へのトラックバック一覧です: 見えるものと見えないもののあいだ:

« 間の極意 | トップページ | 脱出ゲームの解き方 »

最近の写真