間の極意
夜中にザッピングしていたら、「ラ・フォル・ジュルネ」のルポ的番組をやっていた。
本当は北京オリンピックの番組を探していたはずなのに、気が付いたらこっちを見ていた。
私はそれほど熱心に音楽番組をチェックする方ではない。どちらかというと、作曲をしている時であればなおのこと、イメージや感覚が拡散したり何かに似通ってしまうことを懸念して、かなり選んで見るようにしている。
だからその時はあまり意識しなかったけれど、こんな風に無意識のうち音楽番組に引きずり込まれる事はとてもめずらしい。
「ラ・フォル・ジュルネ」は、「一流のミュージシャンを低料金で提供することによって、明日のクラシックを支える新しい聴衆を育てたい」という芸術監督の願いから、多くのスポンサーの協力のもとフランスのナントで毎年行われている音楽のイベント。メイン会場を中心に大小様々なホールで、世界的なミュージャン招聘しながらも比較的安価で気軽に聴けるコンサートが町をあげて繰り広げられる。
この成功を受けて、世界各地で、その国や都市ならではの「ラ・フォル・ジュルネ」が展開されている。
この時は、そのひとつとして東京で行われたコンサートの様子が流れていた。ウェーベルンがアレンジしたシューベルトのドイツ舞曲。ずいぶん昔に聴いたような気もするが、記憶が定かでない。
シューベルトのメロディーの美しさは語る迄もない。それにも増して、ウェーベルンがこんなにやさしい世界を持っていることに驚いた。
でもそれは、私を巻き込んだ真の理由ではなかったと思う。
小さな曲と曲の間に訪れるに音のない時間、そこに演奏者と聴く側が共に感じたであろう何かが生まれていた。息使い、いや脈拍さえも存在していた。その時の無音の時間は、私にとってあまりに心地よいものであった。
通常、映画に音楽を付ける場合、すでにストーリーは存在している。私が関わった作品は、少なくともそうだった。シナリオを読み、コンテやラッシュを見ては、監督の意向を考慮し、完成形を予想しながら音楽を作っていく。
でもそこには台詞やシーンの説明はあっても、「間」についてはどこを探しても書かれていない。
もちろん音楽満載を望む監督がいることも事実だから、それがすべてとは言えないけれど。
ハリウッド映画で育った私は、長い間日本映画の良さを理解することが難しかった。芝居であってもカメラワークであっても、無の存在、無からの表現方法で受け手に伝える手法を感じるためには、時間が必要だった。
「スカイ・クロラ」が、アニメにおいては難しいであろう効果音のみのサイレントの部分を随所にちりばめていて、その美しさに大変感動し、驚いた。
ひとつひとつの事柄が、間への考察を誘う。
そんな中、単館系の邦画を浴びるほど見た。
音楽。本当に少ない。
音に溢れて生まれ育ったはずの世代からの発信が、これほどまで研ぎすまされているんだ。
無が語るもの。
今年の春、篠原哲雄監督からワークショップから生まれた短篇「悪意」のオファーをもらった。
作品の映像は、すでにでき上がっていて、その映像を元に最初のキャッチボールの後、篠原監督からはどこに音楽を入れたらいいと思うか?という質問をされた。
当時、女性アカペラグループ、アウラの為に「アヴェマリア」のアレンジをしている最中だったので、悪意の表現と相まって何とも混沌とした時間を費やして。
そして自分で入れるならここ、という2カ所を見つけた。
結果がどうなったか、読んでくださった方はぜひご自分で確かめてくださいまし。
東京では盛況の中、既に上映が終わっています。
関西の方はラッキーですのでぜひ。
http://www.movie-plus1.com/shinohara.htm
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コメント
えっ?東京上映終わってしまったんですか?
見たい。
投稿: tady | 2008年10月29日 (水) 01時24分
tadyさん
そうなんです。残念でした。ぜひ次回作、見てください。
tadyさんの作品も楽しみにしてますので教えてくださいね。
投稿: shezoo | 2008年10月31日 (金) 19時10分
shezooさん、お元気ですか?
最近の評判のいい、とある邦画を観ました、、、
が、私にとってはいまいちピンと来なくって・・・
ある方が、「ひたすら音楽でごまかしている・・・」
と、おっしゃって、、、、
妙に、「なるほど。。。」と、
思ってしまいました。
映画の音楽って、大事ですね。
思っていたところに、shezooさんのブログで、
なんてタイミングがいいんだろう!!!って、
嬉しくなってしまいました。\(~o~)/
投稿: ポン | 2008年10月31日 (金) 20時50分
ポンさん
コメントをありがとうございます。
最近は音楽劇じゃないか思うほど音楽が至る所に張り付いている映画も多くなっています。音楽を聴いているだけで感情を煽ってくれる作品も沢山あり、それはそれで一つの表現方法なのでしょうね。
私自身は、ぎりぎりまで映像と芝居と台詞で感情を揺さぶってくれた結果として、ポっと音楽が入る方法がこの所気に入っています。
以前、富田勳さんが山田洋次監督の藤沢周平作品の音楽を作る時、ラッシュを見ていても音楽は必要ないと感じた、と言っておられたことがあります。
とどのつまりはそういうことなのかな、と思ったりします。
投稿: shezoo | 2008年11月 2日 (日) 15時16分